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大島隆之「独裁者ヒトラーの時代を生きる」

2020.12.03.21:58

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NHKで放映されたドキュメンタリー「独裁者ヒトラー 演説の魔力」の、番組内では放送できなかったインタビューをまとめたもの。この番組はYouTubeに上がってますね。大丈夫なのかな? 笑)


僕は、ヒトラーの時代を知る現在100歳前後の老人たちが何人もインタビューされるこのTV番組を、放送当時(去年のはじめ)見ているけど、印象として、どこか食い足りない感じがした。ヒトラーのことを語る老人たちの生き生きとした様子がどこか居心地が悪い気がすると同時に、ヒトラーの演説映像を見る老人たちがみんなニコニコと目を輝かせているのに、それをスルーしてヒトラーに誑(たぶら)かされた人々が戦争によってどのような運命を迎えたかという結末、兵士として死んだ若者たちの墓や殺害されたユダヤ人たちを祈念する「つまずきの石」(本の表紙がそれ)へ、強引につなげていったような印象を持った。

で、そのテレビでは映されなかった老人たちのインタビューがこの本に収録されているわけだが、その多くが実はどうやらTVでまとめることが難しい方向へ向かっていったものだったようだ。当時ヒトラー を熱狂的に支持した人たちにとって、戦後、当時の自分を全否定することなど、普通なかなかできるものではないのだろう。

老人たちの多くは戦争になる前までのヒトラーは良いヒトラーで、戦争をしたからこそヒトラーは悪者になったのだと信じている。つまり良いナチスと悪いナチスがあると。TVでも出てきたが、育ての親がユダヤ人だったので収容所に入れられ廃人同様になったにもかかわらず、ヒトラーを信頼しきって空軍兵士として戦った老人が、ヒトラーの演説を称して、ベートーヴェンの第九の最終楽章のような高揚感だったとニコニコしながら話し、ナチスの党歌を口ずさむ。結構ショックだ。

TV番組ではヒトラーの演説の魔力という題名通り、その演説がどれほど人々を魅了したかをメインに描いていたが、この本ではその演説に魅せられた人々が戦後になっても、戦争が終わって4分の3世紀も経っているというのに、そして戦後のドイツでいかにヒトラーがやったことがひどいことだったかが語られ尽くしたと思えるのにもかかわらず、三つ子の魂百までじゃないけど、当時の熱狂が忘れられず、いまだに魅せられていて、それを自分の中でどう辻褄(つじつま)合わせしようとするか、という心理が扱われている。

無論インタビューされている老人たちがいまだにヒトラーの考えを受け入れている差別主義者だとは全く思わない。彼らがヒトラーが主張したようなユダヤ人やスラブ民族は劣等民族だと、今現在考えているはずはない。彼らが嬉々として語るのは当時の感動・感激の思い出なのだろうと思うが。。。

全身全霊をかけて信頼を寄せ、そのために命すらかけた過去とどう向き合うか? なかなかリアルに想像できるものではないだろう。

この本、当時のドイツの状況をわかりやすくまとめていて、ナチスのことなんかよく知らないという人にもおすすめです。


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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

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