
1965年の白黒映画だし、題名を知っている人もあまりいないだろうけど、すごく面白かった。
第二次大戦中、横浜からドイツ軍占領地ボルドーまで貴重な生ゴムを運ぶ使命を帯びたドイツ輸送船の艦長がユル・ブリンナー。一方、反戦・反ナチのドイツ人マーロン・ブランドはイギリス情報部に協力して(脅されて)親衛隊将校と偽ってその船に乗り込み、連合軍側へ積荷の生ゴムを渡せるように画策する。ドイツの輸送船は貴重な積荷を敵に渡すぐらいなら自爆する覚悟で、船の12箇所に爆弾を仕掛けている。ブランドはその爆弾を一つづつ解除していく。
船員の中にはドイツに戻れば政治犯として処刑される可能性が高い者もいるし、一方で、一等航海士はバリバリのナチ。さらに途中日本軍の潜水艦が撃沈したアメリカの輸送船の乗員が捕虜として輸送船に引き渡される。そこにはユダヤ人の少女もいる。この映画に出てくる唯一の女だ。そして、日本軍の潜水艦に指導係として乗り込んでいたナチの将校がブランドを怪しみ、ベルリンへ連絡をしてブランドの正体は風前の灯。
というわけで、ユル・ブリンナーとマーロン・ブランドという芸達者であるとともに無茶苦茶存在感のある名優二人が主演で、敵役のナチの航海士も憎々しいし、しかも映画のカメラワークもかなりの凝り方を見せる。
海上をいく輸送船の遠景が近づいていって、甲板上にいるブリンナーの行動を追いかけるワンショットのシーンなんかどうやって撮ったんだろう? ヘリコプターで? でもこの時代、カメラのスタビライザーなんかないだろうけど、画面がほとんど揺れないんだよね。

船にゆっくりと近づいていき、

船の上まで来ると止まって、

甲板上のユル・ブリンナーを捉えると、

ズームアップ

ブリンナーが移動していくのをカメラが追いかける

以上がワンカット。
それから船の中の床が網目状の鉄板なので上の階が透けて見えるようになっていて、迷路みたいでありながら見渡せるようになっている。
マーロン・ブランドが最初の爆弾の起爆装置を解除した後、その爆弾から上に伸びているコードを見上げる。カメラもそのコードを追いかけて上を写すと、上の階の網目状の鉄板の下、つまりそのその階の天井に当たるところにもう一つの爆弾がある。すると下にいたはずのマーロン・ブランドが上の階から現れて腹這いになって爆弾の起爆装置を解除する。それがワンカットで写されるのだけど、画面の外の空間を感じさせ、かなり斬新だと思う。

起爆装置を解除して周りを見廻し、

ふと上を見ると

コードがつながっている。それをカメラはずーっと追いかけて、

上を向くと四番の爆弾が、

あった、と思うや否や、今上を見上げていたブランドが現れ、この後腹這いになって四番の爆弾を解除をしようとする。

監督はドイツのベルンハルト・ヴィッキ。この監督は反戦映画の古典として有名な「橋」という少年兵たちの悲劇を撮った人で、惜しむらくは丁寧すぎるんだよね。「橋」でも前半は少年たちのそれぞれの事情をじっくり描きすぎて、ある意味退屈なところもある。そしてここでもサスペンスにしてはテンポがあまり良くない。でも、それでも俳優も二大スターだし、最後のシーンも良いし、かなり高レベルの映画だと思うけどね。
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