
全編ワンカット映像というのが売りだというので、
前にここでも紹介したソクーロフ監督の「エルミタージュ幻影」を連想したけど、比べるようなものではないですね。最初の1時間ぐらいはかなりすごいです。戦場の、特に無人地帯の凄惨な風景はかなりのインパクトがあります。
オットー・ディックスという第一次大戦に従軍し、ナチ時代には退廃芸術の烙印を押された画家が描いた塹壕の絵を思い出しました。今回はDVDで見たんですが、これ映画館の大きな画面で見たら臨場感もすごいだろうなぁと思いましたね。
ただ、途中から、特に戦闘機が突っ込んでくるシーンから、なんか変な違和感を感じ始めました。確かにその後の主人公の一人、ブレイクの顔がどんどん青ざめていくシーンなんか、ワンカットといいながらどこかで切ってメークしたんだろうと思ったんだけど、特典の監督の説明を聞くと、あのシーンは完全にワンカットで撮っていて、青ざめていく顔は完全に演技だそうで、すごいシーンです。
全編ワンカットということで、主人公が走り回り駆け回る距離は実感できます。塹壕の中をかなりの距離歩き回るわけで、ワンカットでなければこの感覚はなかなか味わえないでしょう。ただし、ワンカットだからリアルタイムかというと、ちょっと違います。時間的には午後から翌日の明け方までで、この映画のリアルな時間よりはかなり長いです。おそらくトラックに乗っているシーンと気絶しているシーンで時間稼ぎをしているんでしょう 笑)
それはともかく、壊れた橋を渡って、廃墟と化した市街に入るあたりから、何か違和感が強くなっていきました。まあハラハラするんだけどね。なんかゲームみたいなんですよね。戦争を描いた映画なのに、エンターテインメント性が比較的強く出ていて、その点がどうも引っかかります。いやいや、「ゲーム感覚」で見ればかなり面白い映画です。
だけど。。。
1980年ごろまでは戦争娯楽映画というジャンルがあって、結構面白い映画もたくさんあったんですね。だけど、近年はそういう戦争映画ってもう作らないですよね。作れないと言ったほうがいいかな。この間に戦争の実相というのは娯楽として描いてはいけないものだというのが人々の共通の了解事項になったような気がします。
キューブリックが監督したカーク・ダグラスが主演した「突撃」という映画があって、そこでも塹壕の中を延々と歩くシーンが出てきますが、戦争の理不尽さを真正面から描いたすごい映画でした。確かに「1917」でも市民が大量に虐殺されているのがわかるし(あの川のシーンは
ベルイマンの「恥」の中の衝撃的なシーンを思い出しました)、野戦病院テントの阿鼻叫喚もあり、戦争の惨たらしさが描かれるんだけど、意地悪な言い方をすると、どこかアリバイ作りしてるな、と思えてしまう。
1930年、トーキーになりたての頃に作られた
「西部戦線異常なし」の塹壕戦の恐怖感は、僕にとっては一つのトラウマになっています。初めて見たときは本当に怖かった。白黒で画面も荒かったと思うんだけど、本当に怖かったです。同時にものすごく強い反戦メッセージを感じたものでした。
だけどこの映画は? いや、無論反戦メッセージはあちこちに感じられるけど、やっぱりどこか娯楽(=ゲーム感覚)なんだなぁ。そこがどうしても引っかかるんですよねぇ。
それから、ワンカットと言っても、CGでつなぐことはいくらでもできるだろうし、戦場のシーンもCG加工は明らかだし、さらに鮮明なカラー画面というのは、むしろ逆にいかにも作り物めいた感じなんですよねぇ。。。実はCGをほとんど使わなかったラストの塹壕から出ていく突撃シーンも、なんかCGっぽく感じたりしちゃいました 苦笑)
例えば、これは第二次大戦だけど
「炎628」の数々の美しいシーン。夕闇の中で飛び交う曳航弾は本物だし、燃え上がる教会も本当に燃えているわけで、一方「1917」では燃える教会はCGだそうです。
というわけでCG時代の映画の「不幸」なんてね。かつて「ジュラシック・パーク」で寝てしまった老人の戯言でございます 笑)
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