自転車と映画といっても、
パンターニのドキュメンタリーや
アームストロングの映画のように正面から自転車レースや選手がテーマになっている映画ではありません。本題とは全く無関係に、さりげなく出てきたり、会話に出てくる自転車レースのシーンや話題のことです。そんな映画を4篇ほどご紹介。

ルイ・マル監督の「鬼火」(1963)
アル中の治療入院からシャバに戻った男が、かつての友人たちが幸せそうなのに嫉妬して、ただ単に彼らに冷や水を浴びせたいだけで、嫌がらせのように拳銃自殺するまでの二日間を描いた映画です 笑) エリック・サティのピアノ曲が、この映画のなんともやりきれない暗い雰囲気を高めます。
この映画、街中でプロの自転車レースがおこなわれているんですね。先導車について集団が走って行くシーンと拡声器での放送が聞こえます。最初に映画館で見たとき、主人公のモーリス・ロネが道を横断しようとして立ち止まると、風のように自転車が二台かすめすぎるシーンがあったと記憶しているんですが、その後TVで2、3回見てるんですが、そのシーンが見当たりませんでした。あれって記憶捏造したのかなぁ。。。それとも版が二つ(以上)ある可能性もあるかなぁ。。。
暗い顔をしたモーリス・ロネの前を全速で風のように過ぎ去る自転車の姿に、何か「刹那」という言葉を連想して、この映画のテーマとも関係するのか、と思ったのですが、どうもそのシーンがその後見つけられずにいます。
「ルシアンの青春」(1974)
この映画では
親ナチスの自転車のチャンピオンという登場人物が出てきて、バルタリなんか怖くなかった、むしろベルギー人のシルベール・マースの方が手強かったとかいうシーンがあったことはすでに書いた通り。監督は「鬼火」と同じルイ・マルで、この監督はおそらく自転車レースが好きだったんですね。1962年のツール・ド・フランスのドキュメンタリー「ツール万歳」なんて短編も撮っています。
もう10年前に銀座のエルメスで見たことがあるんですが、まるで記憶に残ってない 笑)
この映画はフランスがナチスに占領されていた時代、たまたまナチス側についてしまった10代?の青年の悲劇で、映画そのものとしてはものすごい映画だったと思います。

ジャン・ルノアール監督の「大いなる幻影」(1937年)
第二次大戦の始まる2年前に作られ、まさにこの映画に描かれたことが幻影となってしまいました。第一次世界大戦中の話で、捕虜となったフランス人貴族や平民たちとドイツ人貴族の捕虜収容所の所長(エーリヒ・フォン・シュトローハイムという怪優が演じています)の話で、特に仏独の貴族階級の二人の友情が泣かせます。
この映画の最初の方で、主人公の平民労働者のジャン・ギャバンが、ユダヤ人銀行家のマルセル・ダリオと話すシーンで、ツール・ド・フランスが最高だ、ファベール、ラピーズ、ガリグー、トゥルスリエ、みんなものすごいぜ、と、第一次世界大戦前、ツール黎明期、ほとんど神話の世界のような選手たちの名前を列挙するのでした。

「かくも長き不在」(1961年)
戦争が終わって15年、パリで、廃墟になった教会の前でカフェを経営する女(オーソン・ウェルズの「第三の男」で有名なアリダ・ヴァリ)が街で戦時中ゲシュタポに連れて行かれて行方不明になった夫と思しき浮浪者を見つける。しかしその男は記憶を失っていて、親類を読んで面通ししてもらうけど、近しい親類にも関わらずわからない。むしろ別人ではないかと助言する。茫漠感が残る映画で、同じ年のアラン・レネの「去年マリーエンバートで」みたいな、記憶ってなんなのかという眩暈感を感じさせる映画です。まあ、それよりはずっとメロドラマの色合いが強いですが、最後の夜の街で点在する人影とか、終わり方が謎めいて寄る辺ない感じが、なんとなく「マリーエンバート」を思い出させたのかもしれません。
さて、この映画は最初の方でカフェでみんながラジオに耳を傾け、ネンチーニはどうなってる?と言っているシーンが出てきます。1960年のツール・ド・フランスの優勝者ガストーネ・ネンチーニです。イタリア人。この日はパリ祭という設定なので、1960年のツールの第18ステージということになり、コースはアルプスです。ところがここに、今日のコースはどこだ?と聞く常連客の男性がいて、それに対してツールに関心のない客の女性がトゥルマレでしょ、と答え、それに対して男が、トゥルマレ?じゃあアルプスか?と聞くシーンが続きます。ん? トゥルマレ峠はアルプスではなくピレネーの峠ですねぇ。。。ここはツールにあまり関心のない二人のやりとりが、どちらも違っていて、結果、正解になっているという変なシーンで、知っているフランス人なら笑うシーンなのかなぁ?
それから、よくわからないんだけど、あそこで出てきてネンチーニを気にしている人たちはイタリア系なんでしょうか? それとも、この時ネンチーニが総合トップだったから気にしているのでしょうか?
以上、ここに挙げた映画はどれも映画史に残る傑作に数えられています。日本語版のウィキペディアでも「ルシアン」以外は乗っているし、ヴェネチア国際映画祭(鬼火と幻影)やカンヌ国際映画祭(不在)で賞を取っているし、「ルシアン」はノーベル賞作家が脚本に参加と錚々たる映画です。特に「大いなる幻影」はオールタイムベスト100で繰り返し上位に入ってます。
ただ、どれもフランス映画ですねぇ。イタリア映画でジロを話題にしているシーンが出てくる映画があっても良さそうな気がするけどねぇ。。。思い当たらないなぁ。
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