
1943年キスカ島を撤収した日本軍が置いていった4頭の軍用犬たちとその子孫の数奇な運命を、20世紀の戦争を舞台に描いた小説。発熱でうとうとしている間、目がさめると読んでいましたわ。
なにしろ波乱万丈のお話がすごい。現在(20世紀末)のロシアの元KGBの暗殺者と日本のヤクザとその娘のエピソードと、1943年から89年までのそれぞれの犬たちの子孫とその飼い主たちの人生・犬生が交互に描かれていて、その話がどれも冒険活劇みたいで面白い。しかも部隊もアリューシャン列島のキスカ島からアラスカ、アメリカ本土、メキシコ、一方ハワイや朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガン戦争と部隊も太平洋を越えユーラシア大陸の奥地まで。
出てくる犬も犬ぞりを引いたり軍用犬になったり麻薬探査犬になったり、はてはスプートニクで宇宙へ行ったライカ犬たちの末裔も混じってきて著者自身があとがきで「想像力の圧縮された爆弾」と表現しているけど、まあ見事に爆発しました。
犬ってやっぱり健気で見ててつらいわなぁ。私も子供の頃から犬は何匹か飼った。みんな雑種で庭で飼って、名前は最初の頃はずっとペスだった。最後に飼ったペスはフィラリアで血便で血まみれになって死んだ。もう2度と犬は飼わないと思ったのに、妹が結婚後父と母がポメラニアンを飼って、これにはペスという名前はつかなかった 笑) 今は前に書いたように、全く人馴れしない保護猫が一匹いる。こいつはみてて辛くならない。むしろいつか見てろよ、とっ捕まえてぐしゃぐしゃに撫でてやるからなぁ、と手ぐすね引いてる状態 笑)
閑話休題。文庫本の裏表紙には「エンタテイメントと純文学の幸福なハイブリッド」とあるんだけど、うーん、僕は純粋なエンタテイメントだと思う。まあ、純文学とエンタメの差ってなに?って言われると難しいけど、エンタメはある意味完結してしまっているのに対して純文学の方はそうではないっていう感じかな。結末はハピーであれバッドであれ関係ないでしょう。犬に語り掛ける口調で畳み掛けるような短い文章を連ねて、読みやすいし、人も犬もどんどん死ぬ。死ぬところの状況や気持ちや感情なんていう甘いものはまったくないハードボイルドさ。ただ、ものすごく波乱万丈の面白さがあるけど、最後の方、ちょっとよくわからないところもあるんだなぁ。
ここからネタバレ
人間の主役の一人、「大主教」と呼ばれる元KGBの暗殺のプロは旧ソヴィエトの体制に忠実を誓い、その結果としてソ連が崩壊した現在(1990年?)に憎悪を抱き、腐敗した社会を憎悪し、ロシアマフィアを次々と殺している、とそういう理解でいいんだろうか? だけどそれを日本のヤクザにやらせたのはなぜ?
それから、最後から二つ目の「1990年」と題された短い章で、「大主教」がこれまで訓練してきた犬を、ベルカをのぞいてすべて殺すシーンがあったけど、ヤクザの娘を閉じ込めた「死の街」の数十頭いる犬はあらためて訓練し直したのだろうか?なんかこの辺の時間的なつながりがぼんやりしてしまってうまく掴めてないのかな? 僕は。「大主教」の最後のシーンも犬に取り巻かれているわけだし、それは1991年のことで、その前の年にベルカをのぞいて皆殺しにしちゃったんじゃないの? どうもあの「1990年」の章がよくわからない。
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