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トルストイの「戦争と平和」本と映画の覚え書

2019.01.07.23:10

若い頃、なんどか読み始めては挫折したトルストイの「戦争と平和」、とうとう昨日読み終えました。去年の7月終わり頃に読み始め、ピエールの父ベズーホフの死のところを読んでいたら私の父が亡くなり、ひと月ほど中断なんてこともあったんですけどね。それ以外にも昔から速読が苦手なので、結局最初のページを開いてから最後のページを閉じるまで5ヶ月以上かかりました 苦笑)

さて、手元にあった昭和の時代に購入した新潮文庫版で読み始めたんですが、途中で岩波文庫で新しい翻訳が出ていると知り、それを見たらコラムや、何よりも地図が付いていて、こちらの方がずっと理解に役立つおまけが多く、2巻目からはこちらで読み出したんですが、どうもどこか違和感。なんかどうもしっくりしないんですよ。で、また新潮文庫版へ戻って、そちらで読み続けることになりました。
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その後も時々あちこち読み比べてみたりしたんですが、岩波の方が訳語が説明的という感じなのと、会話の感じが少し軽い気がしました。ただし、最後のエピローグの第二章、トルストイの歴史観が述べられているところは岩波版の方が読みやすく分かりやすかったですね。

ところで、昔の挫折の原因はピエールとアンドレイ、ナターシャらのお話の部分に挟まるトルストイの歴史観に退屈したからだったんだろうと思うんですが、今読んでみるとかなり納得いくところが多いです。トルストイは一人の英雄の決断によって歴史が動いたわけではなく、人々の総和が歴史を動かしたと言ってるわけで、ナポレオンですら歴史の道具扱いですが、単純化をいさめているだけのことだと思えば、そんなに難しいことを言っているわけではないですし、今の時代にもしっくりくる話です。

また、自由な意思で行うことが人間に本当にできるのかという話なども、それに対して責任が問えるのかと、思わず自己責任という言葉を連想しながら読んだりしました。

ただ、これだけの長編だから仕方ないかもしれないけど、僕としては、ピエールと決闘したり、フラれた腹いせにナターシャの兄ニコライと賭けの勝負で大金を巻き上げたり、最後はパルチザンとして大活躍するドーロホフ、だけど捕虜は取らない(皆殺しにする)と豪語するドーロホフ、暴れ者で決闘屋のくせに、老母と障害のある妹と一緒に暮らしていて極めて優しい息子であり兄であるドーロホフ、なんとも魅力的なこの悪党がその後どうなったのか知りたかったところですが 笑)

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さて、本を読んでいる最中の去年の秋、このDVDが近くのブックオフにあるのをたまたま見つけて即断。このソ連版の「戦争と平和」は大学生の時に初めてオールナイトで見た映画でした。その後だったかその前だったか判然としないんですが、ある年の大晦日から元旦にかけてTVでの一挙放送もありました。最初に原作を読もうとしたのもこの頃だったんじゃないかと思います。

当時、ヒロインのリュドミラ・サベリーエワの可憐さに圧倒されましたね。この人、その後イタリア映画「ひまわり」でも出ていました。ロシア戦線に送られたイタリア兵のマルチェロ・マストロヤンニが負傷して、現地のサベリーエワに救われ、夫婦になっているところへ妻のソフィヤ・ローレンが彼を探しにやってくるという内容で、一面のひまわり畑がバックの大号泣映画 笑)でありましたが、ソフィヤ・ローレンとサベリーエワじゃあ、俺だってサベリーエワだわなぁ、とえらく納得したものでした 笑)

「戦争と平和」に戻ると、同時にソ連ロシア映画特有の叙情性がいいです。例えば重傷を負ったアンドレイが運ばれるシーンでは子守唄が流れ、それをベッドで聞く幼子のインサートショットが挟まったり、馬車で移動するシーンで延々と林の梢の流れる様を写したりします。こういうのを退屈だと思う人もいることでしょうけど、それはハリウッドのアクション映画に慣れすぎているんでしょうね 笑)

また空撮が多いのもこの映画の特徴かもしれません。特典映像で見るとワイヤーロープを張ってカメラを滑らせてとっているようです。今ならドローンで簡単に取れるだろうし、そもそもCGを使えば簡単なんでしょうけど。

大軍団同士の戦闘シーンの臨場感や迫力ある移動撮影もソ連映画特有です。ふと、タルコフスキーの「アンドレイ・ルブリョフ」のタタール人が攻めてくるシーンを思い出しましたが、どちらも音楽をつけているのがオフチニコフというソ連映画音楽界の重鎮で、そのせいもあったかもしれません。

ただ、最後に見てから40年以上?たっていると思うので、ずいぶん印象が違うところもたくさんありましたね。

ところで、ハリウッド映画にも「戦争と平和」はあります。ヒロインはオードリー・ヘップバーンですが、ピエール役のヘンリー・フォンダは完全にミスキャスト、というか、原作でもピエールは悪い仲間たちと騒いでペテルスブルクを追放処分くらったり、人生の指針にフリーメイソンの結社に加入したり、かと思うとまたまた放蕩生活に戻ったり、外見もデブの冴えないやつなんですが、ハリウッドではやっぱり美男美女じゃないと許さないんでしょうかね?

それなのに、もう一方の主役アンドレイはメル・ファーラーがやっていて、こちらはむしろ悪党ヅラというか、ちょっとアンドレイにしては品がない 笑)そもそもストーリーのポイントだけをつまみ食いしているような映画で、ヘップバーンが見たければおすすめだけど、トルストイの原作に色濃く出ている歴史の流れ、時間の流れのような雄大な茫漠とした感動がありません。そもそも最後にかつて決闘したドーロホフとピエールが仲直りするのなんか、えらく御都合主義的な感じがしてね。だからハリウッド映画は嫌いだ! なんてね 笑)

まあ時間的にも7時間のソ連版はハリウッド版の2倍以上の時間をかけているし、国家レベルの予算で作られたし、本編もナレーションでの説明が結構多いので、しょうがないんだろうけど、それでも先に書いたような自然描写や叙情性の点ではソ連版の圧勝だと思います。


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アンコウ

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あんけ・たつや。欧州ロードレースに興味を持ってすでに30年以上。主にドイツ人選手を応援。特に青田刈りにいそしむ。歳にも関わらず、あらゆる点ですごいミーハー。そのほか好きなものは、読書、音楽はバッハと友川カズキ、北方ルネサンス絵画、映画、阪神タイガース(村山、江夏以来ですが、強すぎないこと希望、弱すぎはもっと困るが)。北欧の社会民主主義に対する憧れ強し。家族構成は連れ合いと娘三人。

* 時々コメントが迷惑コメントとしてゴミ箱に入れられることがあるようです。承認待ちが表示されない場合は、ご面倒でも書き直しをお願いします。2017年8月3日記す(22年3月2日更新)

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