今見ました。説明をほとんどしないところや、恐らくこれは監督自身の思い出なんだろうなと思わせるシーンに、タルコフスキーの「鏡」を、そして最後のシーンはクストリッツァの「アンダーグラウンド」のラストシーンを連想しました。
監督はテレンス・マリックで、この人はものすごく寡作なことで有名な監督ですね。僕は「天国の日々」と「シン・レッドライン」を見たことがあり、特に「シン・レッドライン」はアメリカ製の戦争映画としてはナンバーワンだと思っています。「プライベート・ライアン」や「フューリー」なんかより個人的にはずっと上ですね。
さて、その「シン・レッドライン」でも自然と人間の対比があって、この美しい自然の中で人間は何て愚かなことをしているんだ、というメッセージのようなものが感じられたんですが、この映画でも最初の30分ほどはずっと宇宙や太古の地球の映像が「コヤニスカッツィ」みたいに延々と流れて、こういうのって個人的には結構好きです。ただ、あの恐竜はなくても良かったんじゃないかなぁ。。。
それ以外にも、ちょっと宗教的・哲学的な感じがあって、ブツブツと小声で語られる神への祈りのようなナレーションは「シン・レッドライン」でもやってましたね。
お話は1950年代のアメリカの家族の話で、マッチョな父親(ブラッド・ピット)に対する少年の反感が断片的にいろんなエピソードの形で描かれています。でも、それ以上にあちこちに挟まる幻想的なシーンなどが良いですね。特に印象に残ったのが、水の中に家があって、そのドアを開けて子供が水面へ向かって浮かびあがろうとするシーン。熊のぬいぐるみがゆっくりと、取り残されたように沈んでいきます。また夢(これを見ているのはおそらく現在のショーン・ペンがやっている元少年?)の中の幻想的な風景も綺麗です。
また説明がないシーン、これは何?というようなシーンも多いです。そもそも次男がなんで死んだのかがわからない。最後にそのシーンになるのかと思ったんですが、途中のセリフで19で死んだというのがあるんだけど、結局最後までわからない。また、最初の方で、3人ぐらいの囚人が警官に連れられて車に乗せられようとしているところへお母さんが水筒の蓋で水を飲ませてやるのなんか、ありゃ何?
少年たちの悪巧みが高じて、ついに窓ガラスに向けて石を投げつけるんだけど、これも何なのか意味不明。次のシーンでは少年は母親から「もう二度としないでね」なんて言われている。火事も何なの? 個人的には炎や、お母さんが空中浮遊するシーンなんかはタルコフスキーへのオマージュかな?なんて思ったりもしましたが。。。
それからハッとするような綺麗なシーンもありました。トラックからDDT(シラミ駆除剤)の煙を噴霧し、それに少年たちが群がるシーンがなんか強く印象に残ります。多分監督の個人的な思い出なんでしょうね。プールでの水死事故なんかや、庭先の逮捕劇を母親が子供に見せまいとするシーンなんかも、きっと本当のことなんでしょう。
そういう意味で、タルコフスキーの「鏡」の様々なエピソードと同じで、ある意味で監督が自分のために作った映画なんでしょう。そして、そうした自分の幼少年期の出来事とその思い出も、父との葛藤も、冒頭に延々と写された宇宙空間と比べたらなんて瑣末でつまらないことなんだろうとニヒリズムに陥りそうなところで、ラストの現在も過去も誰も彼もが一堂に会する大団円になるわけです。
感激度を、上に書いたタルコフスキーやクストリッツァと比べる気はありませんが 笑)、まあ好きなタイプの良い映画でした。個人的には当たりでしたね。

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