憲法改正すべきか否かの話はなかなか簡単なものではない。憲法を変えるべきだと考える人たちだって、憲法のどの部分を変えるべきだと考えているのか、といえば、考えは様々だろう。先ほど放映されたΝHKの番組を見た。
要するに、日本が再び軍備を持ってアメリカに逆らうようになっては困るからと、アメリカは9条の戦争放棄を積極的に「押しつけた」。ところが、共産圏の脅威に対して、日本にアメリカの防波堤になってもらいたいと考えるようになり、憲法改正への圧力をかけるようになった。それはすでに1949年のことだった。つまりアメリカの都合だったというわけである(幣原首相によって9条の文言が加えられたという説などは今は触れない)。
この時日本が憲法を変えていたら、日本軍(!)は朝鮮戦争に派遣されていただろうし、その後のベトナム戦争にも関わらざるをえなかったことだろう。アメリカのために日本人がアジア人を殺したり殺されたりしなかったということに対して、否定的に捉える人はあまりいないと思う。
普通に考えれば、憲法を変えたいのはアメリカと、戦前の日本で権力を持っていた人たちなのである。
現憲法がアメリカから押し付けられたものだというのなら、逆に憲法改正もまたアメリカから押し付けられているのである。そもそもすでに64年の時点で、憲法調査会が、現憲法はアメリカから押し付けられたとは言えないと結論付けていた。曰く、アメリカが「日本に押し付ける草案を作っていたのではないかという一部日本人の憶測には、何らの根拠がありません」
結局戦後すぐの日本は、アメリカから自分らの戦争に参加してくれという要求に対して、9条を盾にノラリクラリと首を縦に振らず、アメリカの要求に乗らなかった。それをどう考えるべきかは人それぞれだろう。僕自身は、あの時代の中で、日本は最善の策を取ったと思っているけど。
しかし当時の改憲派は、今よりずっとまともだった。憲法調査会の副会長だった改憲派の矢部貞治はこういった。
「改憲は国民の盛り上がる支持なしにはやれないし、やるべきでない。改正を強引に強行することによって、国内を分裂状態に導いた例はある。改憲勢力が3分の2を占めただけで改憲など出来るものではない」
あるいはやはり改憲派の廣瀬久忠の言葉はこうだ。
「現行憲法を改正するか否か、いかに改正するかは全て主権者たる国民の判断にかかっている。5年かかっても10年かかってもいいではないか。国民の大部分の納得を取り付けるまで、あくまで努力を重ねるべきである。」
どちらも慎みがある。今、安倍の元で行われようとしていることは、こうした慎みとは全く逆のことで、国内を分裂状態にしようとしてでも、国民の大部分の納得など取り付けなくても、なんとか数の力で憲法を変えてしまえというものである。
僕の考えを言っておけば、もちろん現憲法を今変える必要は、全くないと思う。
……5/4, 17:02 追記……
誤字を直しました。教えてくださった方に感謝します。いつもありがとう。
……

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