昨日も14年前の「不存在」のはずだったイラク日報が実はありましたと、東京新聞では一面トップでした。
こちらの本は一昨年から去年にかけての南スーダンPKOに関する隠蔽事件の顛末です。著者の布施祐仁は、まさにこの隠蔽事件が暴露される発端をつくった情報開示請求者なので、その間のやり取りが描かれていて、それとともに、南スーダンの情勢を巡る国会でのやり取りと、新聞記者で現地での取材を重ねた三浦英之による南スーダンの実際の状況も描かれていて、事件の推移がよくわかります。
いやあ、何しろ凄い話で、森友で公文書改竄が問題になったけど、こちらは隠蔽。こんなことが認められたら、国民が政府を信用できないし、外国からだって信用されなくなってしまうでしょう。
それにしても、当時の国会答弁もひどいものです。「戦闘」を「勢力と勢力がぶつかった」と言い換え、本来なら自衛隊も即座に撤収しなければならない危機的な状態であった(負傷者も出ている)にもかかわらず、反政府側を「国家または国家に準ずる組織」ではないから、武力紛争の定義「国家または国家に準ずる組織の間において生ずる武力を用いた争い」に当てはまらないといい続ける。
まるで言葉遊びです。責任ある者たちの言葉に対するいい加減さに唖然とします。
決定的な質問には答えずのらりくらり。果ては9条があるから武力衝突という言葉は使わないと本末転倒なことを言い出す。語るに落ちたとはこのことだろう。そして最終的に文書を公表したのだから隠蔽ではないと居直る。(泥棒が盗んだものは返したんだから文句ないだろ!と居直るようなものだ)
そして結局防衛省内での隠蔽として事務次官と陸上幕僚長が辞任して尻尾切り。もちろん大臣の稲田も最後までやめようとしなかったけど、ついに諦めて止めますが、何れにしても、隠蔽に政治家の関与はなかったというわけです。さらに辞任した事務次官や、関わったと思われる職員たちは「軒並み『栄転』している」そうです。
確かに森友の佐川氏とは違って、防衛省の場合、隠蔽体質はすでに存在していたので、政治家からの圧力があったかどうかはわかりませんが 苦笑)、大臣の稲田の答弁の経緯を見る限り、彼女が隠蔽を知っていたのは確実だろうし、もし仮に知らされていなかったのであれば、大臣としての資質の問題になるはずです。
この時は、政府はPKOの「駆けつけ警護」などの新任務の実績作りに焦っていたわけで、大した議論もせず強行突破で安保関連法が成立した時期でした。直接政治が関与した証拠はないかもしれないけど、隠蔽しなければならないような状況を作った政治に責任がないはずはありませんね。こういうことを言うと「疑わしきは罰せず」と言い出す人がいますが、権力者に「疑わしきは罰せず」なんていう言葉が当てはまるはずはないでしょう。疑われたら疑いを晴らそうとできることをし、それでも疑いが晴れなければやめるのがまともな権力者のとる道でしょう。まあ、安倍にまともな権力者像を求めるのは無理なんでしょうけど。
しかし、読んでいると、あちこちでデ・ジャ・ヴ感に襲われます。つまり安倍的やり方とは嘘と改竄と隠蔽なのですね。そしてPKOとはなんのためにやるのか、その政府の姿勢もはっきりします。スーダンの人たちを助けたいからPKOを派遣するのではない、貢献を世界にアピールして、自らを誇りたいから派遣するのですね。これじゃあ派遣される自衛隊員たちがかわいそうです。

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