アラン・ラッドと言っても、普通の人は知らないでしょうね。映画「シェーン」の俳優だと言えば思い浮かぶ人も多いかと思う。個人的には映画史上ナンバーワンの美男俳優だと思っているんだけど、これを言っても同意してくれる人はあんまりいない 苦笑)

「シェーン」は僕が生まれて初めて一人で映画館で見た映画。多分中学1年の時、渋谷のプラネタリウムがあった東急の映画館で見たんじゃないかと思う。高校時代には原作本が出て、それも買って読んだけど、映画の印象が強くて、映画と違うシェーンの黒っぽい服装とか、会話の口調とかにいまひとつな感じがした(上の写真は当時のパンフレットと原作本)。
なんで「シェーン」が見たかったか、と言われてもよくわからない。ただ、母親が熱烈な洋画ファンで、特にタイロン・パワー(この俳優の顔がすぐに思い浮かぶ人はかなりのマニアか70以上かな)が好きで、いろんな話を聞かされた。ちなみに母はグレゴリー・ペックをダイコンと言っていた 笑)ペックはともかく、「シェーン」も、もしかしたら母から聞いたのかもしれない。ただ母が西部劇を見るかなあ、という気もするが。
で「シェーン」だ。この後TVでもなんども放映され、その度に見たから、多分なんども見た。ある時、え〜っ? 「シェーン」ってこんな映画だったんだぁ、とびっくりしたのは、シェーンとジョーとその奥さんのマリアンの三角関係の話だということに気がついた時だ。
子供の時に見た時はそんなことまるで気がつかなかったし、印象は何しろ殺し屋ガンマンのジャック・パランスとシェーンの決闘シーンばかりが強く記憶に残ったんだったと思う。実はこの西部劇はピストルを撃つシーンは3回しかない。シェーンがジョーイ少年にせがまれて、石を撃つシーンと、殺し屋ジャック・パランスがエリッシャ・クック・ジュニアの気弱いくせに無理している開拓者を撃ち殺すシーン。そして最後の決闘シーン。
多分、これは当時TVでよく放映されていた普通の西部劇、バンバン撃ち合いばかりだった西部劇とは随分違っていたのではないかと思う。今見直してみると、クラフトンの雑貨屋のカタログのような細部のこだわりがすごいし、銃声が3回しかない分、その音がTVで見ていた西部劇とは違って、ものすごい迫力だった。子供の頃は善良な開拓民に対して、極悪な牧畜カウボーイたちの戦いだと単純に考えていた。でも、何度か見て、シェーンに撃ち殺される牧畜業者にも言い分があり、それがきちんと描かれていることがわかってきた。単なる水戸黄門みたいな勧善懲悪ドラマではなかった。
この映画の中で唯一、本当の悪党であるジャック・パランスややった黒ずくめの殺し屋は、エリッシャ・クック・Jrを撃ち殺した後も笑みを浮かべている。殺しに慣れているのである。人殺しを楽しんでいるのである。しかし、シェーンも実は同じ穴のむじなであることが最後にわかる。彼はパランスと牧畜業者の親玉を撃ち殺した後、銃をくるくると回転させてホルスターに納めるのである。つまり、彼もまた人殺しに慣れていて、人を殺した後、自分の銃さばきに酔って、「いつものように」慣れた手つきで格好をつけるのである。
そう考えると、最初の方で、ジョーイ少年が持っていたライフルのカチャッという音に反応する様は、実は彼はお尋ね者で賞金稼ぎに追われているのではないか、と思われる節もある。最後にシェーンがジョーイ少年に語る「殺しの烙印」という言葉も、今回の三人を殺しただけでなく、それ以前にかなりたくさんの人間を殺してきたことを暗示しているのだろう。
何れにしても、この最後のシーンのアラン・ラッドの美男ぶりには、男の僕で惚れ惚れする。

アラン・ラッドは「シェーン」だけで名を残していると言ってもいいだろうけど、調べると結構面白い映画に出ている。その一番手は「拳銃貸します」かな。映画としては突っ込みどころがいっぱいあるけど、アラン・ラッドがやった帽子をかぶった殺し屋。この時ラッドは29歳。子供に優しく、猫を可愛がり、猫を虐待するおばさんをひっぱたき、ターゲットを非情に殺すという役柄だけど、小柄なラッドがシャープな動きでなかなか良い。コートの襟を立てて表情をあまり表さないところは、多分アラン・ドロンが「サムライ」でやった殺し屋がこのラッドのパクリ(オマージュともいう 笑)ではないかと思うんだけど。

他にも「華麗なるギャッツビー」が原作の「暗黒街の巨頭」も悪くない。レッドフォードがやったのと比べると、ラッド版の方がギャッツビーの嘘つき度合いが高いかな。それとこの映画では惚れた女と再会するところの煩悶の演技がなかなか見せます 笑)ただ、最初と最後が友人の回顧録みたいになっていて、すごいやつだったといい続けられるんだけど、どこがすごいのかが、ひとつよく分からない(もっともこれはレッドフォード版でもそうだと思うけど。ちなみにデカプリオ版もあるけど、これは見てません)。それにレッドフォードよりもアラン・ラッドの方がずっと二枚目だと思うけどどうだろう?

あと、昔はTVでも放映していた「島の女」(原題は「イルカに乗った少年」で、TV放映の時はこの題名だったんじゃないかなぁ)は、ソフィア・ローレンと共演で、これは体格負けしてたかなぁ。それと、この時ラッドは40代後半で、やや顎のラインもふっくらしてて、若いグラマーなローレンはともかく、ラッドを見たくてというと、ちょっとがっかりします。
他にもツタヤディスカスで検索すると、やはり29歳の時の「ガラスの鍵」とか、33歳の時の「青い戦慄」なんていう、いわゆるフィルム・ノワールや、「別働隊」という37歳の時に主演したサスペンスで、全盛期の二枚目ぶりを見ることができるので、興味ある人はどうぞ。

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