上野の西洋美術館で見てきました。僕は自己紹介にも書いてあるように15、6世紀のフランドルの、ファン・エイクからブリューゲルあたりまでの絵が特に好きなんですけど、なんでそんな古い絵が好きなのかな、と考えてみると、実は、絵じゃなくて、あの時代の雰囲気が好きなんだろうな、という気がしてきます。
ホイジンガというオランダの歴史学者がいて、その著作に「中世の秋」という本があるんですが、その時代のメランコリックな雰囲気とか、敬けんで静謐な宗教的な情感とか、そんなものに憧れていた、とともに、これらの画家たちの絵に描かれている人々の佇まいに惹かれたんでしょう。実際の画家たちは、ホイジンガの本でも指摘されていたけど、そうした静謐で敬けんで宗教的な世界とは真逆の、宮廷や貴族や金持ち階級のけばけばしい世界で活躍してたんですけどね。
まあ、それはともかく、クラーナハといえばやっぱりファム・ファタルというやつ。普通運命の女とか訳すんですかね? 男を破滅させる女のイメージ。敵将を色仕掛けで酔わせて文字通り寝首をかいてしまう美女、ユーディットの絵が一番有名でしょうか。この絵、画集なんかで見るよりずっと明るいのに驚いたんですが、どうやら最近修復されたようです。
クラーナハは工房で大量生産したんで、ものすごい数の作品があるらしく、女性の顔は魅力的なのもあれば、なんか下手くそな印象のもある。ヌードも、やたら妖艶な魅力的な(まあ、俗にいえば「いやらしい」)のもあれば、腹ぼて気味でなんかゴツゴツ腰骨が浮き出てんじゃないのって感じの、あまり魅力的じゃないのもある。今回来ていた中では、やっぱり会場に入ってすぐの聖母子像とユーディットが一番でした。それと、今回実物をたくさん見て思ったのは、なんか黒い色がものすごく黒いという印象です。それは肖像画の背景だったり、森の木々の間の影の色だったり、ルターの僧服の色だったり、いろいろなんですが、恐ろしいぐらい黒いというのが印象に残りました。
デューラーの版画なんかも一緒に展示されていて、見比べると、クラーナハはデューラーより、やっぱりワンランク下なのかな、なんて思いました。例えばクラーナハのルターの肖像とデューラーのメランヒトンの肖像の差は、モデルの違いを別にしても、同じ銅版腐食版画であるにもかかわらず、迫力がずいぶん違います。デューラーもそうですけど、なんとなく無骨な感じで、イタリアルネサンスの絵画なんかと比べると、逆に写実的なのかな、とも思えます。なんか、みんな田舎の姉ちゃんみたい 笑)
金曜の3時ぐらいから見たんですが、けっこう人は入ってましたね。

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