斎藤美奈子のコラムにも出てましたが、南京虐殺の関係書類が世界記憶遺産に登録されたことをめぐって、政府要人は「けしからん、金をださん」と発言して、世界中に日本の恥をばらまいています。昨日書いた武田砂鉄(そういえば斎藤と武田は同じ大学出身者なんですね)の、日本でしか通用しない「偽造パスポート」じゃないけど、日本国内に向けてこういうことを言えば喜ぶ人がいるんでしょう、きっと。でも海外に向けてこういうことを言えば、そのパスポートは使えないよ、世界中の人に呆れられるってどうして分からないんだろう?? そういやあ、従軍慰安婦の問題だって櫻井よしこらが以前アメリカの新聞にわざわざ「ありゃウソだ」なんて広告を出して、恥ずかしいったらありゃしない。
以前書いたように、日中関係がこういうことになったのは石原が尖閣を東京都が買うなんて言い出したことにあるんだよ。未来の智恵にまかせて棚上げしておきましょう、と日中で暗黙の了解だったものをわざわざ挑発して、さらに野田がそれに乗って国有化して、中国だって怒るの当たり前だよ。そしてそれに続いて安倍やその周辺の発言は、だれでも推測できるだろうけど、日本の侵略を正当化しようとしている。
国益っていう言葉を使いたがる奴が多いけど、その国益とやらを一番損なっているのが、日本の一部の人間にしか通用しない「偽造パスポート」なのに外国でも通用するかのように振る舞う連中だよ。
南京虐殺については
少し前に堀田善衛の「時間」について書いたときに触れたけど、いずれにしても兵士たちの証言もあるのだから、南京虐殺などなかったなんて言う連中は、そんなことを証言した元兵士たちはみんな嘘吐きだと主張しているようなもので、そうなると、日本人は嘘吐きばかりだ、と言っていることになる。
少し前に読んだんだけど、保阪正康の「戦場体験者」という本、日本の兵士たちの戦場がどんなものだったかが描かれている。戦後になって兵士たちが口をつぐんだのは戦友会の存在が大きかったらしいが、それでも中国でひどいことをした元兵士たちが老人になってからの話にはショックを受けた。忘れないのは被害者だけではなく、加害者もだったという保阪の言葉もあった。この本についてはチャンスがあればまた触れたい。
虐殺された人数が問題だという人も多いようだけど、もう分からない。どうやっても分からないのである。殺害された人たちはほとんどが川へ放り込まれて流されてしまったのだから、検証のしようもない。だけど、そんな人数の問題ではなく、以前にも書いたけどやはり堀田善衛の言葉がとても重いと思う。しつこいけど、コピペしておく。
「死んだのは、そしてこれからまだまだ死ぬのは、何万人ではない、一人一人が死んだのだ。一人一人の死が、何万にのぼったのだ。何万と一人一人。この二つの数え方のあいだには、戦争と平和ほどの差異が、新聞記事と文学ほどの差がある」(新潮文庫「時間」p.57)
アイヒマンだったか、の言葉に一人の死は悲しいことだが100万人の死は数字だ、とかなんとかいう言葉があったと思う。一人一人の死に思いをいたせないような人間ではありたくない。

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