ナチスの時代に絶滅収容所へ連行されるユダヤ人たちは、誰から聞かされるでもなく、貨車から降りて身体を洗ったら、また別の収容所へ連行されて、そこで働くことになるのだと、自分たち同士で言い合っていたそうである。実際には身体を洗うためにシャワールームに入ると、お湯ではなく毒ガスが降ってきたわけだ。
子どもの頃に聞いた、ダチョウは敵が近づいてくると頭を砂の中に突っ込むという話を連想する。都合の悪いことは見なかったことにするわけ。で、食われちまう。まあ、本当のことかどうかは知らないけどね。
絶滅収容所で殺されたユダヤ人とダチョウの馬鹿な習性を同一に扱う不謹慎はもちろん承知の上だ。ただ、こういうことって、実は人間みんなが持っている特性なんだろうと思う。ダチョウの習性は人間にこそ当てはまる。
人は自分に都合の良いことを信じたがる。ひょっとしたらこれから殺されるのじゃないかと思ったユダヤ人たちもたくさんいたことだろう。だけど、そうじゃなくてこの収容所は中継地点にすぎず、他のところへ連れて行かれて働くことになるのだと言い合い、信じ合って、安心し合っていたんだ。
きちんと考えることは面倒くさいし、政治のことなんて関心ないし、自分の周辺さえ満足できれば、社会がどうなろうと関係ないし、と言って砂の中に頭を突っ込んでいてはいけない。

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