
実に久しぶりに富士山の写真です。以前はしょっちゅうアップしてたんですがね。地震のあと、どうもそういう気になれずにいましたが、今朝はきれいだったので。。。
さて、昨日NHK・BSのプレミアムアーカイブスで佐々木昭一郎の「四季〜ユートピアノ〜」を放映してくれました。これは1980年のドラマで、むろんその時に見てます。その後にも何回か再放送をしていて、僕も何度か見たはずです。記憶に強く残ったドラマ?でした。とにかく主役の中尾幸世というのが、とっても良い感じで、なんか忘れられなくなったんですよね。佐々木昭一郎のこの後の作品でもいくつかに出演してますが、それ以外にもラジオドラマでも聞いたことがあります。声がとってもいいんですよ。数年前に、やっぱり再放送の時にゲストで出てきて、当時の雰囲気がさらにしっとりした感じでとってもいい雰囲気の、若い頃と同じようなちょっと恥ずかしそうな笑顔が素敵なおばさんになっていました。
この「四季〜ユートピアノ〜」は、最初に見たときにはストーリーがよくわかりませんでしたね。そしてこの作品が好きな人の中にも、きっとストーリーなんてどうでもいいんだ、という人もいるかもしれません。
最初に見たときにはタルコフスキーの「鏡」を思い出しました。中尾幸世が主人公の榮子役と同時に、榮子の母の役も演じていて、過去と現在が入り交じった展開、それから映像に凝ったところなんかがそう思わせたのだと思います。
ただ、人によってはこの素人のような作りと、出てくる人たち(みんな素人)の演技に、ちょっと受け付けない、という人もいるかもしれません。なにしろ登場人物が走ると手持ちカメラも走って、当時のスタビライザーなんてお粗末だったのでしょう、画面がぶれまくります。中尾幸世と、途中で出てくる友人の女性以外の登場人物の台詞は滑舌も悪いし聞き取りにくく、演技としてもかなり辛いところもあります。まあ、中尾も含めてみんな、役者じゃない人に演技させているわけだからね。
お話は、しっかりと説明されるストーリーではないのですが、こんな感じです。北国の貧しい家で生まれた主人公の榮子、幼い頃に兄とピアノを見たくて忍び込んだ小学校が火事で兄は死に、母は自殺し、父は精神的におかしくなって、廃船に火を付けて自殺か事故死してしまうという悲惨な境遇です。ただし、そうした悲惨な雰囲気は、画面からはまったく感じられません。その後、祖父母の元で育てられ、飲み屋のバイトで稼いだ金で祖父母に馬をプレゼントしたりしますが、高校卒業後に都会に出てきて、ピアノ工房で働くようになります。4人の若者と知り合いになるけど、工房は潰れてしまう。そして、調律師の老人のもとに住み込みで弟子入りして、調律師として働き、盲学校やサーカス、オペラ歌手、豪華客船のピアノを調律します。一方師匠は手が麻痺し、その後亡くなるらしいのですが、はっきりした説明はありません。
こうした話の中に、幼年時代の思い出が混じり、雪の風景やリンゴ畑の風景が差し挟まれ、さまざまな音、とくに音叉の残響やマーラーの第四の有名なメロディーとか、バッハの「人の望みの喜びよ」などが非常に印象的に流れ、最後は高校のピアノの調律とともに第九の合唱が演奏されて終わります。
最初と最後が中尾幸世のアップに中尾の歌うグスタフ・マーラーの第四の有名なメロディーがかぶり、最初と最後で円環が閉じたような印象を与えます。
出会いと別れの話なんだろうけど、すべてが余りに素っ気なく、不親切な作り方だと言って良いのでしょう。ただ、あちこちに挟まれる雪景色や、雪に埋まった線路やリンゴ畑、草の生い茂った野原など、印象的な、というか、こういう風景やシーンが自分の見たことのあるシーンのような気がし、さらに音叉の残響などの音にも、どこか懐かしいような気持ちになります。最後、中尾幸世のアップが突然真っ暗になり 〜ひと〜 というテロップと共に出演者の名前が下からあがってくるんですが、見終わっての余韻がすばらしい。なかなか、こういうTVドラマってないです。佐々木昭一郎という人の作ったドラマがすべて面白いとは思わないけど、この「四季〜」は絶対に傑作だと思っています。

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