右にも書いたように、ぼくは北欧の社会民主主義に強いあこがれを持っている。社会がつくとすべて国営になり、私有財産制がなくなると素朴に信じている人は、さすがにそういないだろうとは思うけど、でも日本ではアメリカの影響なのか、ヨーロッパ的なこの制度は人気がない。
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でも、スウェーデンを初めとする北欧の国々なんか投票率って戦後ほとんど常に80%を越えていると聞いたことがあるし、国民の多くがこの制度を認め、望んできた歴史があるわけなんだろう。
というわけで、そんな理由だけでタイトル(ノルゲはノルウェーのこと)から図書館で借りてきた小説が上の本。この作者の小説は初めて読んだし、内容もまったく予備知識なしで読み始めたんだけど、とてもおもしろかった。妻がノルウェーの工芸大学へ留学するのにくっついていった鬱病やみの「おれ」の話。分類すると私小説っていうやつにはいるんだろうけど、そんな分類はどうでもいいかも。何しろ読んでいて気持ちがいい。何が起こるわけでもない。せいぜい多発性頭痛が起きるぐらいで、これといって事件も起きない。ただ、一年間ノルウェーで過ごした日常が語られるだけなんだけどね。ノルウェーの人々や音楽や鳥の話や、ノルウェーの作家の「鳥」という小説の断片的な訳がはさまり、なんとも読んでいるのが楽しかった。
最初のほうにリルケの「マルテの手記」にならって、「見ることを学んでいる」って出ていて、最後に四季を描いた織物に触発されて、一編の詩が書かれる。ちょうど、「マルテ」のなかでも、詩とは感情ではなく、経験である、人は様々な経験を積んだ末に、一編の詩の最初の一行が浮かぶのだ、と断言されているように、作者も一年間のノルウェー滞在という経験の成果としてこの詩を賜ったかのようである。
波瀾万丈のおはなしではなく、ゆっくりと北欧の世界に浸かって読書を楽しみたいという人にお勧め。
---追記
リルケと言えば、拙ブログの「惨憺たるアンコウ」の由来、村野四郎の「さんたんたる鮟鱇」のエピグラムもリルケなんです。拙ブログの命名の由来はこのエピグラムにあります。
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