
イタリア人作家ディノ・ブッツァーティの小説的ドキュメンタリーを、いつものように未知谷さんに本にしていただきました。
1949年のジロ・ディ・イタリアはファウスト・コッピが無茶苦茶強くて、ライバルのジノ・バルタリがムチャ強くて、ほかの選手たちだって強かったのでした。そして戦火の跡がまだ生々しいイタリア各地の人々の熱狂ぶりもすごいです。
著者のブッツァーティは代表作「タタール人の砂漠」や短編集がいくつか文庫本になっている、イタリアのカフカと呼ばれている作家ですが、そのスタイルはこの帯同記でも発揮されていて、どこか現実の世界ではないような、へんなユーモアのような、深刻なような、不思議な雰囲気があります。海外のジロやコッピの本にはよく引用されていて、英独仏西語に訳されています。
1949年のジロについては YouTube に全19ステージ中14ステージの記録映像があります。ここに埋め込むと最初のステージで止まってしまうようなので、今回はリンクしておきます。リンク先でクリックすれば続けて全部見られるはずです。各ステージほぼ1分弱ですし、当時の映像ですから雰囲気の参考程度に 笑)https://www.youtube.com/playlist?list=PLK1QYHf4OvhMls2dGQ2uPhJLQRWU0wjnO観客の数だと今の方が多いかもしれませんね。ただ、当時は外国から見にくるファンはいなかったでしょうし、戦争が終わってまだ4年ですからね。それを考えれば、特にドロミテやアルプスの観客の数にはびっくりです。
過去拙ブログで書いたコッピとバルタリのエントリーもリンクしておきます。
コッピ関係1952年のツールを古雑誌で(1)1952年のツールを古雑誌で(2)1952年のツールを古雑誌で(3)1952年のツールを古雑誌で(4)1952年のツールを古雑誌で(5)最終回バルタリ関係バルタリのこと故バルタリに名誉の称号バルタリ(つづき)バルタリ、イスラエル名誉市民にさらに、以前出したオランダのベンヨ・マソの「俺たちはみんな神さまだった」は、この本の前年1948年のツール・ド・フランスでのバルタリの活躍を描いたものですので、この本と一緒に読んでいただけると、訳者としては大変に嬉しいです。
2023年5月29日追記。
日本イタリア会館というところの会館紙に評が載ったのでリンクしておきます。
http://italiakaikan.jp/culture/publish/img/Corrente391.pdf#page=4

今日は本の宣伝です。
ベンヨ・マソというオランダの社会学者が書いた1948年のツール・ド・フランスのドキュメンタリー「俺たちはみんな神さまだった」を翻訳しました。例によって未知谷さんにお世話になっています。
後ろはこんな(ちょっとした誤植はご愛嬌 笑)。

中はこんな。

全346ページ、写真約65枚。
アマゾンなどのネットでも注文できるようですが、ここのコメント欄に連絡先を書いて送っていただければ僅かですが割引になります。もちろんコメントは公開しません。
1948年というと、終戦から3年、まだまだ物資は不足しているし、東西冷戦が始まろうとしていて、政治的社会的にも大混乱の時代。そんな中でよくもまあ自転車レースなんか開催する気になったと思います。
レースは戦前にツールで圧勝しているジノ・バルタリと、フランスの若きエース、ルイゾン・ボベの激しい争い。だけどそれ以上にフランスナショナルチームの人間模様がむちゃくちゃ面白いです。
現在のように、システマチックになってしまって、チームの指示に絶対服従(この前のブエルタではアシストしなかったバルギルが帰宅させられてましたね)、役割分担が完全に決められ、レース展開もある程度お約束になっている(序盤逃げた選手がそのまま逃げ切ることはまずない)ようなツールとはまるで違います。監督の言うことなど無視を決め込み、嫌いなエースのためになんか働かず足の引っ張り合い。しかし、それにしてもバルタリの強さが圧倒的です。そして、その勝利が戦後の動乱期、革命騒動のイタリアの政治状況にまで影響を与えることになります。
日本ではバルタリは若くして亡くなったファウスト・コッピの引き立て役のように語られることが多いですが、ものすごい選手だったのは間違いありません。興味があれば、ぜひ手にとっていただけると嬉しく思います。
これは広告なので、しばらくブログのトップに出るようにしておきます。(2017年12月13日21:50記)
いつもコメントを下さる CYPRESS さんが、詳しい紹介をしてくださいました。感謝いたします。(2017年12月30日14:55 記)
https://cypresshushizen.blog.fc2.com/blog-entry-2916.htmlmomoさんからもコメントでサンスポのコラムで紹介されていることを教えていただきました。感謝いたします。(2018年1月4日 21:19記)
https://cyclist.sanspo.com/3779842月1日の日経新聞で藤島大さんが「目利きが選ぶ3冊」に、読むべき本として紹介してくださったそうです。また、こんな地味な読者を選ぶ本なのに とりっぽん さんという方が第4回日本翻訳大賞に推薦してくださいました。二次選考であっさり落ちましたが 笑)、想像もしていなかったことでした。この本を訳した者として、お二方に心より感謝いたします。ありがとうございました。(2018年2月8日記)
信濃毎日で紹介されたようです。ありがたいことです。(2018年2月16日記)


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